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自社の魅力を自分の言葉で語る【オンボーディングによる仕組みづくり】


自社の採用がうまくいかない、広告を増やしても反応が鈍い、スカウト文面を磨いても母集団が増えない。母集団形成の失敗の原因を「テクニック不足」だと思い込んでしまう企業は少なくありません。

しかし、本質的な課題はもっと手前にあります。
「うちの会社の魅力を、自分の言葉で語れる人がどれだけいるか。」

この本質的な課題を追求していない会社は、例外なく採用に苦戦します。

本記事では、会社に潜む、自社の魅力の”語れなさ”の構造をほどきながら、誰もが自社の魅力と課題を自然に言葉にできる状態、その土台になる「透明性」について整理します。

自社の魅力が言語化されない本当の理由

結論からいうと、それは「経営・現場・採用で見えている景色が違う」からです。

━ 経営は数年先の未来を見ている
━ 現場は今日の数字と業務量で頭がいっぱい
━ 採用担当は候補者向けに整えられた“外向きの会社像”を見ている

これらの異なる景色の違いは、誰にも悪気がないことが多いです。見えている“土台”が違うだけです。しかし、この小さなズレが積み重なると、外から見れば「よく分からない会社」に映ってしまいます。

魅力はあるのに“翻訳”が追いついていない

どの会社にも、語るべき魅力は必ず存在します。
顧客との距離、スピード感、意思決定の速さ、学習の機会、人間関係の近さなど。しかし、それらは日常に溶け込みすぎていて、魅力として扱われていないことが多くあります。

例えば、毎朝の短いミーティング。
ただの業務連絡に見えて、実は“心理的安全性の担保”や“期待値のすり合わせ”になっていたりすることもあります。しかし、誰もそれを言葉にしていません。

企業文化とは、本来こうした“無意識の営み”の積み重ねです。だからこそ「翻訳」が必要なのです。「日常の当たり前を、外から見れば価値になる言葉に変える」、これが翻訳です。

翻訳が弱い会社では、求人票は表面的になり、面接では言葉に詰まり、候補者は“ふわっとした印象”のまま帰ってしまいます。問題は魅力がないことではなく、魅力を“伝わる単位”に分解できていないことなのです。

自社の魅力を語らせてみよう

「うちの会社の魅力って何だと思う?」

たったこの一言で、組織の“解像度”がそのまま浮き彫りになります。

例えば、こう返ってくるかもしれません。

  • 裁量が大きいと思います
  • 良い人が多いです
  • スピード感がある会社です

どれも嘘ではありません。
ただ、これだけでは候補者には何も刺さりません。なぜなら、どの会社も似たような言葉を使うからです。

語れる人がいる会社は、回答に「具体性」が乗ります。

  • 「裁量が大きいことです。昨日入社したエンジニアが、今日もう仕様について意見を出しています。」
  • 「良い人が多いです。Slackで困っているメンバーを見ると、誰かが必ず10分以内に拾っていることがほとんどです。」
  • 「スピード感です。週次の改善提案が翌週に反映されることが当たり前になっています。」

こうした具体性は、温度感や言葉の信頼性を担保するため、採用において非常に重要な要素となります。そして、オンボーディングの整理にも直結します。

母集団を増やす前にやるべきこと

採用が苦しい会社は、どうしても“集める工夫”から始めてしまいがちです。そして、広告、スカウト、SNSなど、施策そのものは悪くないことが多いです。

しかし、肝心の「会社の解像度」がぼやけたままだと、来てくれた候補者に魅力が届きません。採用とは「集める前の整理」が8割です。ここからは、そうした”整理”のやり方を扱います。

◆母集団を増やすなら、まず透明性を上げる

企業が持つ内側の情報すべてと、求職者が知っている外に出た情報、この“情報の非対称”こそが、誤解や期待ギャップの元になります。

たとえば、

  • 想像以上に意思決定が速く、ついていけない
  • 評価基準が曖昧で、自分がどこに向かえばいいのか分からない
  • 現場は思った以上に忙しく、誰に何を聞けばいいのか迷う
  • 良くも悪くも「自走前提」の文化で、助けを求めるのに気を使う

こうした違和感は、求職者の理解不足ではなく、企業側の翻訳不足で生まれます。

透明性の高い会社ほど、応募が安定します。理由はシンプルで、候補者が「嘘がない会社」に安心するからです。実際、Realistic Job Preview(現実的な職務情報)は離脱率を下げることが研究でも示されています。

▼RJPについては、こちらの記事を参考にしてください。
RJPとは?内定承諾率が上がる“リアルな採用”の作り方

魅力を盛るのではなく、「整っている部分」と「まだこれから整える部分」をセットで伝えることが、応募率にも、定着率にも効いてきます。

◆現場のリアルを正直に見せる企業になる

求職者が知りたいことは、企業が思っているほど難しくありません。多くの場合、次のようなことを率直に知りたいだけです。

  • どれくらいのスピードで成長できる環境なのか
  • どんな価値観のメンバーが多いのか
  • 入社後、最初の数週間でつまづきやすいポイントはどこか
  • 上司や同僚はどんなコミュニケーションを取っているのか
  • 日々の業務で「当たり前」とされる行動基準は何か

しかし、企業側はこの“日常”を魅力として捉えていません。

一方で、採用がうまい企業は、現場の様子を丸ごと渡します。それは派手な情報ではなく、むしろ地味な一次情報です。

  • 実際のSlackのやり取り
  • 1日の業務の流れ
  • チームミーティングの進め方
  • 暗黙のルールになりがちなこと
  • 入社1か月で求められる行動レベル

こうした“等身大の透明性”こそが、求職者を安心させます。整っていないことは問題ではありません。“整っていないと知っているかどうか”が問題なのです。

“自分の言葉で語れる人”を増やす仕組みづくり

会社の魅力は、制度ではなく「人の語り」に宿ります。だからこそ、語れる人が増えると、採用も育成も安定していきます。

1.個人×組織×環境の三層で構造を“見える化”する

魅力を語れない一番の理由は、会社の構造をどこまで説明すれば良いかが曖昧だからです。
人は曖昧なものを説明できません。そこで、個人・組織・環境の三層で会社を捉え直してみます。

  • 個人の層では、役割と期待する行動
  • 組織の層では、育成・評価・サポートの仕組み
  • 環境の層では、文化や雰囲気、心理的安全性や人間関係

ここが整うと、会社を“どの切り口で説明すればいいか”がクリアになり、語りに輪郭が出てきます。“裁量が大きい”の一言ではなく、「どの職種で、どんな状況で、どんな判断が任されるのか」まで自然に語れるようになります。これが語れる組織の最初の基礎です。

2.入社前から入社後まで一貫した情報伝達を設計する

語る内容が一致しない会社は、「採用」と「オンボーディング」が分断されています。
採用で聞いた魅力が、入社後の現実の行動に接続されていません。

本来は、採用フェーズで語る内容と、オンボーディングで伝える内容は“ほぼ同じもの”であるべきです。価値観、行動基準、求める姿勢、直面するであろう壁など、これらが「採用→入社→現場」で地続きに語られていると、社員の理解は一気に深まります。

  • 採用で「自走力が大事」と伝えたなら…
    入社後の1週間で“自走とは何を指すのか”を具体的に体験できるようにすることです。
  • 採用で「スピード感」を打ち出すなら…
    最初の業務で「どんな判断がスピードだと評価されるのか」を体感できるようにすることです。

採用とオンボーディングが一本のストーリーになると、社員は自然と「語れるよう」になります。

3.語れる人を増やすための日常の問いかけ

語れる人を増やすには、特別な研修は不要です。
日常の中に、語りの素地が育つ場面がたくさんあります。

1つは、会議や1on1での問いです。
進捗の確認だけで終わらせず、「なぜそう判断したのか」「この会社らしさが出るのはどんな瞬間か」という背景まで言語化させるのです。

もう1つは、マネジャーの“説明の仕方”です。
指示だけでなく、判断の背景や価値基準を添えて話すことです。これが積み重なると、メンバーは会社の文脈を自然と吸収していきます。

そして、新人が入ってきたときこそチャンスです。新人は組織の違和感を敏感に感じ取ります。それらは、そのまま採用フェーズの改善点になります。拾って言語化していくことで、会社の語りはどんどん整っていきます。“語れる組織”とは、決して話が上手い人がいる組織ではなく、会社の価値観が、日常の会話に溶け込んでいる組織なのです。

おわりにー会社の透明性は“採用の上手さ”よりも土台になる

採用は、うまい言い回しや美しい求人票で勝負するものではありません。
最終的には、「この会社は嘘がない」と思われるかどうかで決まります。そして、その判断材料は制度でも福利厚生でもなく、そこで働いている“人の語り”に宿ります。

自社の魅力を自分の言葉で説明できる人がどれだけいるか。その数が、採用の質、オンボーディングの成功率、心理的安全性、育成文化の成熟度までを左右します。

採用を強くしたいなら、集める前に「整える」ことです。働く一人ひとりが会社を理解し、自分の言葉で語れるようにする。それだけで、母集団は自然と増え、定着率も上がります。

最後に皆さんへの問いかけです。
社内の誰かに、こう聞いてみてください。

「うちの会社の魅力って、何だと思う?」

その答えが、組織の現在地です。そして、その答えを少しずつ変えていくことこそが、これからの採用とオンボーディングの仕事です。


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